WAISテスト(ウェクスラー成人知能検査)は、高校生以上を対象に「知能指数(IQ)」だけでなく思考力や記憶力、処理スピードなど、個々の考え方の特徴を測る心理検査です。発達障害(ASD・ADHD)などの特性理解にも役立ち、結果をもとにした支援や進路選択に大きく活かすことができます。
本記事では、WAISテストの概要や4つの主要指標の意味、結果の読み解き方、そして日常生活への活用法をわかりやすく解説します。
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WAISテストとは?高校生以上の発達特性を理解するための心理検査

WAISテスト(ウェクスラー成人知能検査)は、高校生から成人を対象に知能や認知の特性を多面的に評価する心理検査です。単にIQを測るだけでなく、「どのように考えるか」「何が得意・苦手か」といった個性の傾向を可視化します。
ここからは、WAISの目的やWISCとの違いを解説します。
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WAISテストの目的は知能指数だけでなく考え方の特徴を明らかにすること
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WISCとの違いは16歳以上を対象とした大人向けの検査である点
WAISテストの目的は知能指数だけでなく考え方の特徴を明らかにすること
WAISテストの目的は単にIQという数値を出すことではなく、思考や理解、記憶、処理などの「考え方のクセ」を明らかにすることにあります。
たとえば、言葉の理解が得意なのか、目で見て考えるのが得意なのかといった特徴を把握すれば、学習や仕事、日常生活での得意・不得意を具体的に理解できます。
検査結果は本人や家族、支援者が「どうすれば生活しやすくなるか」を考えるための重要な基礎資料となるでしょう。
WISCとの違いは16歳以上を対象とした大人向けの検査である点
WISC(ウィスク)が15歳までの子ども向けの知能検査であるのに対し、WAISは16歳以上の高校生・大学生・成人を対象としています。出題内容はより抽象的で、日常生活や社会的な場面で必要とされる思考力・判断力を測る設問が多いのが特徴です。
そのため、思春期以降の発達特性をより正確に理解でき、学習や進路、職業選択における支援の方向性を見出す際にも役立ちます。
WAISテストにおける4つの主要指標をわかりやすく解説

WAISテストは、単なるIQではなく「4つの能力」を測る検査です。それぞれの指標から、考え方や得意・不得意の特徴を具体的に理解できます。
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言語理解(VCI)|言葉の理解力・表現力・思考力を測る指標
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知覚推論(PRI)|目で見た情報をもとに推論・判断する力を測る指標
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ワーキングメモリー(WMI)|聞いた情報を一時的に記憶し活用する力を測る指標
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処理速度(PSI)|視覚情報を正確に素早く処理する力を測る指標
言語理解(VCI)|言葉の理解力・表現力・思考力を測る指標
言語理解(VCI)は、言葉の意味を理解し、自分の考えを整理して伝える力を評価する指標です。語彙の豊かさや一般的な知識、抽象的な概念の理解などを通して、言語的な思考力や表現力を測ります。
たとえば、質問の意図を読み取り的確に答えられる、会話や文章で自分の意見をまとめて伝えられるなどが得意な場合はスコアが高くなるのが特徴です。一方、言葉の裏の意味をつかみにくい、説明を聞いてもピンとこないといった傾向がある場合は低く出ることがあるでしょう。
このように、VCIは学習理解や対人コミュニケーションに深く関わる重要な要素です。
知覚推論(PRI)|目で見た情報をもとに推論・判断する力を測る指標
知覚推論(PRI)は、目で見た情報から規則性や関係性を見つけ、論理的に考える力を測る指標です。図形やパターン、ブロックを使った課題などを通して、空間認識力や直感的な理解力、問題解決の柔軟性を評価します。
視覚的な情報を素早く処理できる人は、図やイメージを使って考えるのが得意で、数学・設計・デザインなどの分野で力を発揮しやすい傾向があるでしょう。一方で、文章や抽象的な説明よりも、実際に見たり触れたりして理解するタイプといえます。
PRIは「見る力」「考える力」を通じて、実践的な学び方のヒントを与えてくれます。
ワーキングメモリー(WMI)|聞いた情報を一時的に記憶し活用する力を測る指標
ワーキングメモリー(WMI)は、「短期的に情報を覚えて使う力」を評価する指標です。数字の並べ替えや暗算の課題などを通して、聞いた情報を頭の中で保持しながら処理する能力を測ります。
ワーキングメモリー(WMI)力が高い人は、指示を順序よく覚えて実行したり、複数の情報を同時に整理するのが得意です。一方で、WMIが低いと、聞いたことをすぐ忘れてしまう、作業途中で抜け漏れが起きやすいといった傾向が見られます。
集中力や注意の持続にも関わるため、学習効率や仕事のパフォーマンスにも影響します。適切な環境調整やメモ活用などの支援が有効です。
処理速度(PSI)|視覚情報を正確に素早く処理する力を測る指標
処理速度(PSI)は、見た情報をどれだけ正確かつ素早く処理できるかを測定する指標です。記号や文字を短時間で照合する課題を通じて、作業のスピード・正確さ・注意の配分を評価します。
スコアが高い人は、単純作業やタイピング、書類整理などを効率的に進められる傾向があります。一方、スコアが低い場合は、作業に時間がかかる、注意の切り替えが難しいなども特徴です。
PSIは知的能力そのものというより、「処理のテンポ」や「集中しやすさ」を表す指標であり、学習環境や仕事の進め方を工夫するうえで重要な手がかりになります。
WAISテストの受け方・検査の流れ・費用を詳しく紹介

WAISテストは医療機関や心理センターで受けられ、流れや費用を事前に知っておくことで安心して検査に臨めます。ここでは受検の手順や費用の目安を紹介します。
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WAISテストを受けるためには医療機関や心理センターに相談する
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所要時間は約2時間で最大15項目の検査に取り組む
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費用は自費が中心で診断目的なら保険適用のケースもある
WAISテストを受けるためには医療機関や心理センターに相談する
WAISテストは、一般的に精神科・心療内科などの医療機関や、公的な心理センター、大学附属の心理相談室などで実施されています。まずは「発達特性を知りたい」「学習や集中に困りごとがある」などの悩みを相談し、医師や臨床心理士が必要と判断した場合に検査を案内される流れです。
WAISテストが受けられる医療機関や心理センターには以下の施設があります。
予約制の機関が多いため、希望する場合は早めに問い合わせるのが安心です。また、検査前に目的(診断か自己理解か)を明確にしておくと、結果の説明や支援提案がより的確になります。
所要時間は約2時間で最大15項目の検査に取り組む
WAISテストは1対1の個別形式で行われ、臨床心理士が課題を順番に提示します。検査内容は10〜15項目ほどあり、言葉の理解、記憶力、図形の把握、処理スピードなど多様な分野を含みます。
全体の所要時間はおおよそ2時間前後で、集中力を要するため検査当日は体調を整え、十分な休養を取っておくことが大切です。途中で休憩を挟む場合もあり、受検者のペースに合わせて進行されます。
検査後は結果のフィードバック面談があり、得意・不得意の傾向を丁寧に説明してもらえます。
費用は2~3万円程度で自費が中心、診断目的なら保険適用のケースもある
WAISテストの費用は自費が中心で、一般的な相場は2〜3万円前後です。料金は医療機関や実施機関によって異なり、結果の報告書作成や面談が別料金となる場合もあります。
ただし、発達障害(ASD・ADHDなど)の診断を目的として医師が必要と判断した場合は、保険が適用されるケースもあります。検査を予約する際には、費用の総額・支払い方法・結果の受け取り方(口頭説明・書面など)を確認しておくと安心です。
目的や費用を理解したうえで受検することで、より有意義な結果を得られるでしょう。
WAISテストの結果を読み解く際の3つのポイント

WAISテストの結果は、単なる数値ではなく「特性を理解し支援につなげるための情報」です。ここでは、結果を正しく活用するための3つの重要な視点を解説します。
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WAISテストの全検査IQ(FSIQ)は知的能力の全体像を示す
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4つの指数の得点差は思考や学習の特性を読み取る手がかりになる
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結果は学校・家庭・支援先と共有して支援に活かす
①WAISテストの全検査IQ(FSIQ)は知的能力の全体像を示す
WAISテストで算出される全検査IQ(FSIQ)は、言語理解・知覚推論・ワーキングメモリー・処理速度といった4つの指標を総合した「知的能力の全体像」を表す数値です。
一般的に数値が高いほど、学習や問題解決のスピードが速い傾向がありますが、FSIQはあくまで全体的な傾向を示すものであり、個々の能力差までは反映されません。
たとえば、一部の指標が極端に高い・低い場合は、FSIQだけではその人の強みや困りごとを正確に把握できないことがあります。そのため、FSIQの数値だけで判断せず、各指標のバランスや背景を含めて理解しましょう。
②4つの指数の得点差は思考や学習の特性を読み取る手がかりになる
WAISテストでは、4つの指標(VCI・PRI・WMI・PSI)の得点差に注目することで、思考の傾向や学び方の特徴を読み取ることができます。
たとえば、言語理解(VCI)が高ければ言葉で考えるのが得意で、知覚推論(PRI)が高ければ視覚的に理解するタイプです。一方、ワーキングメモリー(WMI)や処理速度(PSI)が低い場合、記憶の保持や作業のテンポに課題が生じることもあります。
得点の差が大きいほど、情報処理の方法に「凸凹」がある可能性が高く、それが日常の困りごとにつながるケースもあります。
数値を見る際は、単なる高低ではなく「どのように考えているか」を重視しましょう。
③結果は学校・家庭・支援先と共有して支援に活かす
WAISテストの結果は本人だけでなく、家庭・学校・支援機関と共有することで初めて効果的に活かせます。
たとえば、学校では得意な学習方法を取り入れる、家庭では環境を整える、支援機関では具体的な対応策を立てるなど、複数の立場で協力できれば生活全体がスムーズになります。
また、結果の数値や得点差は「評価」ではなく「支援の方向性を示すヒント」として捉えることが大切です。検査を通じて得られた情報を周囲と共有しながら、本人が自分らしく過ごせる環境を整えていくことが、WAISテストの本来の目的といえます。
WAISテストと発達障害(ASD・ADHD)との関係

WAISテストの結果は、発達障害の特性を理解するうえで重要な手がかりになります。ここでは、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)に見られる傾向を解説します。
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ASD(自閉スペクトラム症)は言語理解と処理速度の差が出やすい
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ADHD(注意欠如・多動症)は作業記憶と処理速度が低く出やすい
ASD(自閉スペクトラム症)は言語理解と処理速度の差が出やすい
ASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つ人は、言葉の理解や知識の整理といった論理的・言語的な能力に優れている一方で、状況の変化や臨機応変な対応が苦手な傾向が特徴です。WAISテストでは、言語理解(VCI)の得点が高く、処理速度(PSI)が低めに出るケースが多く見られます。
これは、考え方が丁寧で情報をじっくり処理するタイプであることを示しています。支援では、急かさず落ち着いた環境を整えることが重要です。
作業の手順を視覚的に提示したり、見通しのあるスケジュールを設定できれば安心して行動できます。ASDの人の強みである理解力や集中力を活かしながら、本人のペースを尊重した支援が効果的です。
ADHD(注意欠如・多動症)は作業記憶と処理速度が低く出やすい
ADHD(注意欠如・多動症)の傾向がある人は、注意の持続や情報の整理が苦手な場合が多く、WAISテストでは作業記憶(WMI)と処理速度(PSI)の得点が低めに出る傾向があります。複数の情報を同時に処理することが難しく、焦りやミスにつながることもありますが、興味のあることには強い集中力を発揮するのも特徴です。
支援の際は、指示を短く・順序立てて伝えること、こまめに確認や声かけを行うことがポイントです。作業を細かく分けて達成感を積み重ねられれば、集中力や自信を伸ばせます。
また、時間やタスクの見通しを立てやすくする工夫(タイマーの使用や予定表の提示)も有効です。環境を整えることで力を発揮しやすくなります。
WAISテストの結果を日常支援に活かす3つの方法

WAISテストの結果は、単なる数値ではなく「支援の道しるべ」です。ここでは、結果を日常生活や学習支援にどう活かすか、3つの具体的な方法を紹介します。
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得意な領域を伸ばす学習・進路の方向性を考える
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苦手な領域は環境調整や支援ツールでフォローする
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家庭・学校・放デイで情報を共有し一貫した支援を行う
①得意な領域を伸ばす学習・進路の方向性を考える
WAISテストで高い得点を示した領域は、その人の「強み」として大切にすべき部分です。言語理解(VCI)が高ければ読解力や説明力を活かせる分野、知覚推論(PRI)が高ければデザインや構造的思考を生かせる分野が向いている可能性があります。
学びや進路を考える際には、得意分野を中心に組み立てることで、意欲や自信を育てやすくなります。また、本人が興味を持てる分野に挑戦し、成功体験を積むことで自己肯定感も高まるでしょう。
WAISの結果は「伸ばすべき力を見つけるツール」として、成長の方向性を考える上で非常に有効です。
②苦手な領域は環境調整や支援ツールでフォローする
WAISテストで示された苦手な領域は「努力不足」ではなく、特性として理解することが大切です。作業記憶(WMI)や処理速度(PSI)が低い場合はタスクを細かく区切り、一つずつ達成できる仕組みをつくると効果的です。
また、視覚的なスケジュール表やリマインダーアプリなど、支援ツールを使うことで負担を軽減できます。無理に克服を目指すよりも、「環境で補う」工夫を取り入れることが支援の第一歩です。
本人が安心して取り組める環境が整えば、自然と集中力や自立性が育ちやすくなります。そのため、周囲が理解し、サポートの質を高めることが重要です。
③家庭・学校・放デイで情報を共有し一貫した支援を行う
WAISテストの結果は、家庭・学校・放課後等デイサービスなど関係機関で共有し、一貫した支援を行うことが重要です。各場所での対応がバラバラだと、子どもが混乱したり、力を発揮しづらくなったりするケースがあります。
逆に、特性に合わせた声かけや環境設定を共有すれば、安心して生活・学習に取り組めます。たとえば、学校での配慮内容を家庭でも継続する、放デイでの成功体験を学校に伝えるなど、情報の循環が支援の質を高めることにつながるでしょう。
WAISの結果をもとに、本人の強みを活かしながら安定したサポート体制を築くことが、継続的な成長につながります。
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WAISテストの結果は、お子さまの得意・不得意を理解し、適切な支援につなげるための大切な手がかりです。特性を理解したうえで、その子に合った環境やサポートを選ぶことが、安心して成長できる第一歩になります。
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