さまざまなスポーツの土台となる運動能力を要する野球は、子どもの習いごとでも人気の高いスポーツです。発達障害のある子どもも楽しみやすく、野球を通して運動能力・社会性・コミュニケーション能力が育めます。
一方で、保護者のなかには発達障害があっても楽しく続けられるのか、周囲に迷惑がかからないかが気になり、習いごとをためらっている方もいるはずです。
そこで本記事では、発達障害の子どもと野球の習いごとについてまとめました。
野球によって得られる効果や楽しく続けるためのポイントを解説しているため、ぜひ参考にしてください。
療育施設検索サイト「 イクデン」では、野球をはじめとする運動・スポーツがメインの施設情報を掲載しています。
発達障害の特性を理解した指導者のもとで野球を楽しんでもらいたい方は、ぜひイクデンでお子さんに合う施設を探してみてください。
発達障害の子どもを野球教室に通わせるのは迷惑なのか?

発達障害のある子どもを野球教室に通わせることは、決して迷惑ではありません。ただし、野球教室のレベル、指導者やチームメイトなどの人的環境によって楽しく通えるかどうかは変わってくるでしょう。
周囲への迷惑や人間関係に不安がある場合は、発達障害に理解のある指導者がいる教室や発達障害の子どもが在籍している教室を選ぶと安心です。また、事前に子どもの特性を伝えてサポートを依頼しておくと、周囲と良好な関係を築きやすくなり、社会性を育みながら野球を楽しめます。
一般的な野球教室やスポーツクラブでの配慮に不安がある場合、発達障害の特性を理解している療育施設で野球や運動に取り組むのも一つの方法です。
発達障害の子どもが野球から得られる5つの効果

野球では、主に投げる・打つ・走るの3つの動作が鍛えられます。
基礎的な運動能力が向上する以外にも、野球を通して以下の5つの効果が期待できるでしょう。
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体幹と協調運動が自然に鍛えられる
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社会性とコミュニケーション能力が向上する
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成功体験を通じて自己肯定感を育める
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集中力と衝動性のコントロール力が身につく
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投げる・打つ・走るの基本動作が他のスポーツにも活かせる
①体幹と協調運動が自然に鍛えられる
野球で大事な投げる・打つ・走るといった動作には、体幹と粗大運動、協調運動が深く関わっています。
粗大運動とは立つ・走るなど体を大きく使う動作のことで、協調運動は目と手、手と足など複数の機能を連携させて動かすことです。
目と手の協調運動のキャッチボールや、手と足の協調運動のバッティングなど、野球の動作は基本的な運動能力を自然に鍛えられます。
そのため、体幹の強化や協調運動の能力向上が期待でき、発達性強調運動症(DCD)の改善にもつながるでしょう。
出典: 発達障害児のMotor skillsを改善するための介入|J-STAGE
②社会性とコミュニケーション能力が向上する
チームスポーツの代表ともいえる野球は、仲間との協力やコミュニケーションが欠かせません。お互いに声をかけ合ったり、協力しあったりしながら行うため、自然にコミュニケーションの学びの場が生まれます。
ほかにも、ルールに沿った行動や順番を守ることで社会性を身につけ、試合や練習を通して自分の役割を果たすこと、チームメイトの気持ちを考える力も身につけられるでしょう。
運動能力の向上だけでなく、社会性やコミュニケーション能力が育まれていくことも野球によって得られる効果です。
③成功体験を通じて自己肯定感を育める
野球を通して経験する成功体験の数々は、子どもの自己肯定感が高まる経験です。
チームの勝利に貢献するなどの大きな成功体験に限らず、ボールをキャッチできた、バットに当てられたなどのスモールステップの経験も子どもにとって大事な成功体験になります。
発達障害のある子どもは、やりたいことが上手くできない、思うように動けないといった経験の積み重ねによって自己肯定感が低くなりがちです。
その点、野球はスモールステップの目標を設定しやすいため、目標の達成や成長実感が得やすく、自己肯定感を育むのに適しています。
④集中力と衝動性のコントロール力が身につく
脳機能は運動によってさまざまな影響を受けますが、野球の場合だと運動・言語・感情を司る前頭葉への影響が強いといわれており、注意力・集中力・感情のコントロール機能の向上が期待できます。
発達障害のうち多動性や衝動性を特徴とするADHDの子どもの場合、体を動かすことが エネルギーの発散になるため、野球を通して落ち着く力が身につきやすくなります。
瞬時の判断力や高い集中力が求められるバッティングや守備は、日々の練習の積み重ねが判断力と集中力の訓練になり、コントロール力が養われることで日常生活でも役に立つでしょう。
⑤投げる・打つ・走るの基本動作が他のスポーツにも活かせる
投げる・打つ・走るといった野球の基本動作は、野球以外のさまざまのスポーツでも共通する動きです。
スポーツの土台となる運動能力が野球を通して鍛えられるため、運動能力が育まれていくうちに野球以外のスポーツを楽しむことや、運動に対する苦手意識の改善にもつながっていくでしょう。
運動への苦手意識が改善されると、野球を含めスポーツを意欲的に楽しめるようになります。また、ほかのスポーツへの興味・関心を持つきっかけにもなるため、子どもの選択肢もさらに広がるはずです。
あらゆる運動のベースとなる基礎能力を向上させる手段としても、野球は活躍します。
発達障害の子どもが野球を楽しく続けられる環境選びの3つのポイント

発達障害のある子どもにとって、野球は運動能力の向上や社会性、コミュニケーション能力の育成に効果が期待できるスポーツです。
子どもに楽しく野球を続けてもらうためには、以下の3つのポイントを踏まえた環境選びをしましょう。
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発達特性への理解がある指導者がいる
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勝利至上主義ではなく楽しさ重視を方針にしている
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相談しやすい環境が整えられている
①発達特性への理解がある指導者がいる
発達障害のある子どもが楽しんで野球をするには、特性への理解がある環境、もしくは特性を理解しようとしてくれる環境を選べるかどうかが重要です。
指導者やチームメイトに発達障害への理解がある場合、子どもに対する練習方法や指導方法も柔軟に対応してもらえる可能性が高いでしょう。
叱らず褒めて伸ばす、瞬時に理解しやすい明確な指示、視覚的なサポートなどを配慮してもらえるか、個別で対応できる指導者がいるかといった点も環境を選ぶときのポイントになります。
そのため、あらかじめ体験や見学で指導者の対応を観察したり、発達障害の特性を伝えたときの反応を確認したりするのがおすすめです。
②勝利至上主義ではなく楽しさ重視を方針にしている
野球教室やチームを選ぶ際は、競技成績を重視する強豪チームではなく、できることを増やしつつ野球を楽しむことを重視するチームを選びましょう。
勝利至上主義の教室やチームの場合だと掲げる目標が高い分、求められる技術も高くなり失敗への叱責が多くなる可能性があります。実力によって練習内容や指導方法に差が生まれるため、野球に対する興味関心や思いがない状態では、練習も辛い時間になるでしょう。
また、叱責が続くと「自分だけができない」と自己肯定感の低下につながることも考えられます。
野球への興味関心がまだ強くない場合や野球を通してスポーツに関心を持たせたい場合に始めるのであれば、自分のペースで進められるような余裕と自由がある、楽しさ重視の環境を選んでください。
③相談しやすい環境が整えられている
子どもの特性についてだけでなく、野球の技術に関する内容や人間関係のトラブルなど、保護者の気になることを気軽に相談できる環境が整っていることも大切なポイントです。
その日の練習の様子をフィードバックしてもらえる、定期的な面談や連絡帳でのやり取りがあるなど、指導者側が保護者とのコミュニケーションの機会を意識的に確保していると信頼関係が築きやすくなります。
信頼関係が築けていると、些細なことでも相談・共有しやすくなり、子どもが楽しんで野球を続けるための環境を協力して作り上げられるでしょう。
また、勘違いや誤解によるチームメイトとのトラブルが起きることも考えられるため、困りごとが起きたときに柔軟かつ速やかに対応してもらえる体制が整っていると安心です。
野球を運動療育に取り入れている施設を探したいなら「イクデン」をご活用ください

発達障害のあるお子さんが野球を楽しむための選択肢には、野球を含めた運動療育に特化した療育施設を利用する方法もあります。
療育施設のなかには、粗大運動を取り入れた支援に力を入れている施設も多く、野球をはじめとする多種多様な運動を通して社会性やコミュニケーション能力を育みます。
イクデンは、全国にある療育施設の情報を約8万件掲載しているため、近くにある療育施設を簡単に調べられる点が特徴です。
条件を絞ることで運動療育に力を入れている施設を簡単にピックアップでき、各施設の基本情報や特徴をスムーズに調べられます。施設に関して気になることがあった場合には、施設ページから空き状況の確認や問い合わせも可能です。
野球を運動療育に取り入れているかどうかも問い合わせられるため、希望に合う療育施設探しにぜひご活用ください。
【エリア別】野球療育を実施しているスポーツクラブ・施設を紹介

ここでは、野球療育を実施しているスポーツクラブや施設をエリア別にまとめています。
野球の要素を活用した療育プログラムを取り入れている施設もピックアップしたので、参考にしてみてください。
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東京エリア
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埼玉エリア
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神奈川エリア
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大阪エリア
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福岡エリア
東京エリア
東京エリアで野球を取り入れた療育活動を行っている施設は、以下のとおりです。
マリリンスポーツ塾Goは、発達に応じた完全個別プログラムが特長の児童発達支援・放課後等デイサービスです。療育活動はマンツーマンで行うため、集団活動にやや苦手意識があるお子さんも安心して運動に取り組めます。
療育に対応するスタッフは、スポーツ指導経験のある専門スタッフのため、運動の基礎となる基本的な体の使い方のほか、野球に必要となる動きも丁寧に身につけられるでしょう。
野球教室に通い始める前に野球への興味を深めて、基本的な体の動かし方を楽しく身につけたい方におすすめです。
埼玉エリア
埼玉エリアにある野球を取り入れた運動療育が可能な施設は、以下のとおりです。
「人と人との繋がりを大切に」を理念に掲げるヒトツナ大袋教室では、学校や地域、社会などの集団に入っていくうえで必要となる社会性のトレーニングに力を入れた療育施設です。
活動の一環として、わくわくスポーツ教室を開催しており、少年野球のコーチ経験があるスタッフを中心に、野球の基礎となる動きを楽しみながら体験できます。
野球ボールを打ったり投げたりするほか、バランスストーンを使った盗塁ダッシュなど、野球の動きを取り入れたオリジナルメニューも魅力です。
神奈川エリア
神奈川エリアで野球を取り入れた療育活動を実践している施設やクラブは以下のとおりです。
横浜メイキングスは、横浜市を拠点に活動している障害者野球チームです。
練習メニューには全体練習のほか、技量・年齢・目標に応じてチームを3つのグループに分け、グループごとに練習や試合を行っています。
メンバーは発達障害に限らずさまざまな特性があるため、一人ひとりの特性に合わせた無理のない練習メニューに対応しています。そのため、できることから少しずつ始めて自信をつけていけるでしょう。
リーグ戦に参加しているため、ほかのチームとの紅白戦や練習試合で交流を深める機会も楽しめます。
大阪エリア
大阪エリアで野球療育を取り入れている施設、スポーツクラブは以下のとおりです。
いろは放課後等デイサービスでは、デイサービス開設当初から月に3回の野球療育を行っています。
子どもたち一人ひとりが今できることを練習メニューにした活動内容となっており、活動を通して野球のルールを学ぶほか、マナーや礼節などの社会性の大切さも身につけていきます。
放課後等デイサービスを卒業したあとは、ボランティアとして野球療育に参加できるほか、いろは卒業生を中心に発足した草野球チーム「IROHOUSE」にも所属可能です。
福岡エリア
福岡エリアで野球を取り入れた療育活動を行っている施設は、以下のとおりです。
放課後等デイサービスのオールピースは、一般企業への職場体験や一泊二日の秋キャンプなど、さまざまな社会体験を取り入れた療育プログラムが特徴です。
日常的な療育活動の一つとして、野球経験や野球指導経験のあるスタッフによる野球を取り入れた運動療育も行っています。トレーニングは、子どもたちの特性に合わせて基礎トレーニンググループと実践グループに分かれるため、無理なく楽しみながら野球体験が可能です。
トレーニングメニューは、捕球姿勢での運動やバッティングと守備のように実践的なものまでさまざまです。
発達障害の子どもの特性を理解し、野球を好きになってもらうための工夫

野球の楽しさを知って好きになってもらうには、子どもの特性を理解したうえで伝わるように教える工夫が大切です。
発達障害の子どもが野球を楽しむために、意識したい工夫のポイントをまとめました。
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【視覚的サポート】絵や動作の分解で理解を助ける
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【指示の工夫】具体的な指示を一度に一つずつ伝える
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【環境調整】感覚過敏の特性に配慮する
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【スモールステップ】達成可能な目標で成功体験を積む
【視覚的サポート】絵や動作の分解で理解を助ける
発達障害のある子どもは、言葉や会話からやるべきことや体の動かし方をイメージするのが難しい場合があります。
そのため、練習メニューや動作の手順を説明する場合は、イラストや写真を使った視覚的な説明で理解を助けるのが効果的です。
言葉だけでは理解しきれない情報でも、視覚的に伝えると理解してもらいやすく、練習の狙いや意味、注意してほしいことが伝わりやすくなります。
あらかじめ、ホワイトボードに練習メニューや順番を書いておくと、子どもも見通しを立てやすくなり、よりスムーズに伝わるでしょう。
【指示の工夫】具体的な指示を一度に一つずつ伝える
発達障害の特性を踏まえた指示の工夫には、具体的な行動を一つずつ伝えることも大切なポイントです。
抽象的な表現や複数の指示は混乱を招きやすく、集中力の低下や癇癪につながることもあります。指示を伝えるときには「腕の前でボールを持つ」「右足を一歩前に出す」など、具体的な行動を端的に伝えるように意識しましょう。
また、複数の指示が一度に出ると、指示の内容と動作の順番がわからなくなり混乱してしまうため、一つの行動を終えてから次の指示を出すように心がけます。
【環境調整】感覚過敏の特性に配慮する
感覚過敏は発達障害のなかでも、主にASDの特性として見られやすい反応です。
大声や笛の音、周囲の騒音が苦手な場合は、耳栓やノイズキャンセリングイヤホンの使用を認めたり、静かな時間帯や場所で個別指導の時間を設けたりしてみましょう。
事前に休める場所を決めておけば、感覚過敏によって辛くなった場合でも子どもの負担を減らしやすくなり、安心して練習に取り組むことや練習中の集中力アップにつながります。
【スモールステップ】達成可能な目標で成功体験を積む
発達障害のある子どもには、自己肯定感を高めながら自信をつけてもらう工夫を取り入れるのもおすすめです。
キャッチボールができるようになることを最終的な目標にする場合、最終目標だけに向かって練習するのではなく、ボールを転がす、山なりに投げる、胸の高さで投げる、といった具合で細かいステップに分けましょう。
スモールステップを設けた場合、細かいステップで一つずつ目標を達成していきながら最終的な目標達成に導くため、成功体験が積み重なり、自信や自己肯定感の向上につながります。
また、練習を成功体験で終えられるように、練習後半には達成しやすいスモールステップの課題を設けるのもおすすめの方法です。
発達障害のお子さまのペースを大切に野球の楽しさを見つけよう

さまざまなスポーツの土台となる要素が鍛えられる野球は、発達障害のあるお子さんの運動能力の向上に効果的です。また、野球ではチームメイトとの協力やコミュニケーションが欠かせないため、社会性やコミュニケーション能力が自然に身につくメリットもあります。
周囲の迷惑になる、楽しく続けられるか心配といった不安がある場合は、発達障害の特性に理解がある指導者がいる環境、楽しさを重視した野球ができる環境を意識して選びましょう。
また、発達障害の特性を理解した専門スタッフが揃う療育施設で、野球に触れる選択肢もおすすめです。
イクデンでは、各施設の強みや特色などの情報をわかりやすく掲載し、療育プログラムや施設の強みが希望にマッチしているかスムーズに判断できるようになっています。
施設ページからそのまま問い合わせもできるため、気になる施設の具体的なカリキュラムを確認したいときにも便利です。
発達障害のあるお子さんのペースを大切にした運動療育の施設を探すなら、療育施設検索サイト「イクデン」をご利用ください。
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