放課後等デイサービスの送迎は当たり前?保護者のニーズに応えるサービスの実態
放課後等デイサービスによる学校や自宅への送迎サービスは、通所の負担を大きく軽減する重要な支援であり、就労中の保護者や共働き家庭にとって、日々の生活と仕事の両立に欠かせない要素です。
公共交通機関の利用が難しい地域や遠方にある事業所でも、送迎があれば通所継続の支えになります。
しかし、全ての事業所が送迎サービスを提供しているわけではありません。
全国の事業所約1,000箇所を対象にした「放課後等デイサービス送迎の実態についてのアンケート調査」では、送迎サービスを提供している事業所は約650(約65%)と報告されました。
厚生労働省の調査によると地域間の差異が明確で、地方では70%以上の事業所が送迎を行っている一方、都市部における送迎サービスの提供割合は約40%に留まっています。
送迎体制は地域や事業所によって異なるため、利用前の提供状況の確認が非常に重要です。
それでは、保護者の皆さんが感じる送迎サービスの具体的なメリットから詳しく見ていきましょう。
保護者にとって送迎サービスが便利な理由
仕事を抜けることが困難な保護者にとって、毎日の送り迎えは、時間だけでなく体力的・精神的にも大きな負担です。
障害のあるお子様にとっては、複数回の乗り換えが必要な公共交通機関の利用は、安全面での不安もあり大きなストレスに繋がりかねません。
しかし送迎サービスがあれば、定時まで働き経済的な安定を保ちつつ、お子様の安全面にも配慮しながら通所させられるため、必要な療育を受けさせやすいです。
とくに交通の便が悪い地域では、バスの本数が少ないケースや電車の駅から事業所まで距離があるケースも珍しくないため、送迎は心強い支援となります。
また、兄弟姉妹がいる家庭では、習い事の送迎や家事との両立も困難を極めますが、放課後等デイサービスで送迎サービスを利用できれば、他の家族との時間や保護者自身の休息の時間も作れます。
専門的な知識を持つスタッフによる送迎は、お子様の様子を客観的に観察してもらえる機会となり、療育に関する情報共有の場としても活用可能です。
どれだけ魅力的なプログラムを提供している事業所であっても、送迎サービスがないことから利用を断念する家庭は少なくありません。
事業所の送迎サービスが充実していると、より広い地域からお子様の受け入れが可能なため、多様な背景を持つお子様同士の交流機会の提供につながり、社会性の発達にも大きなメリットをもたらします。
送迎サービスはただの移動手段ではなく、地理的・身体的な不安を解決し、安全かつ安定した通所を可能にする、生活の質をも高める重要な支援サービスといえるでしょう。
送迎サービス利用の基本【どんな時に利用できる?】
実は送迎サービスは、希望すれば誰でも自由に利用できるわけではありません。
お子様の自立を促進するという療育の基本方針の下、明確な利用基準とルールが設けられています。
ここでは、送迎が利用できる基本的な場面と条件を詳しく確認していきましょう。
基本的な送迎場所:自宅・学校・特定の合意場所
放課後等デイサービスの送迎は、利用者の安全確保と利便性を考慮し、基本的な場所は明確に定められているため、事前の合意が重要になります。
明確なルールはありますが、利用者の状況に応じて柔軟な対応も可能です。
①自宅と事業所間の送迎
最も一般的な送迎パターンが、お子様の自宅と放課後等デイサービス事業所間の送迎です。
登録されているお子様の住所が基本となり、マンションやアパートの場合はエントランス付近、一戸建ての場合は門前や駐車可能な場所での乗降対応が一般的かつ標準的です。
ただし、交通事情や道路状況によっては、最寄りの安全な場所での乗降となる場合もあります。
②学校と事業所間の送迎
学校終了後に直接放課後等デイサービスを利用する際、保護者が就労等で送迎できない場合に認められるのが、学校から事業所への送迎です。
校門前や昇降口付近などの指定された場所でお子様を迎え、事業所まで安全に送り届けます。
なお、学校によっては送迎車両の駐車場所や時間帯に制限があるため、学校と事業所双方の事前調整が必要です。
③特定の合意場所での送迎
利用者の利便性を考慮して、保護者と事業所で事前に合意した特定の場所での送迎も可能です。
以下のような場所が「特定合意場所」に含まれます。
最寄り駅 | ・駅の改札口付近 | 電車通学のお子様や保護者の迎え場所 |
集合場所 | ・公園 | 複数の利用者が集まる場合 |
他施設 | ・習い事教室 | 他のサービス利用後の送迎 |
商業施設 | ・ショッピングセンター | 保護者の都合の待ち合わせ |
事業所によっては、送迎サービスを利用する際に理解しておくべき制限があります。
まず、事前合意の原則から、送迎場所は保護者と事業所間で必ず事前に合意の必要があり、当日の急な変更や合意されていない場所への送迎は認められません。
また、送迎場所は車両の安全な駐車が可能で、お子様の乗降に危険がない場所でなければならないため、交通量の多い幹線道路沿いや駐車禁止区域での送迎は避けられる傾向にあります。
短期入所(ショートステイ)を利用しているお子様は、宿泊施設が「居宅に準ずる場所」として扱われ、送迎加算の対象となることから、ショートステイ先から放課後等デイサービスへの送迎が可能となります。
緊急時以外の当日変更は避け、やむを得ず送迎場所を変更する必要がある場合は、可能な限り早めに事業所へ連絡しましょう。
自立を促す観点からの送迎の必要性
放課後等デイサービスにおける送迎は、ただの移動手段ではなく、お子様の自立能力の発達を最優先に考えて実施される支援です。
送迎の必要性は、療育の基本理念である「自立促進」の観点から慎重に判断することが求められます。
お子様の年齢だけでなく、認知能力、判断能力、身体能力も基準に、安全性を総合的に評価・検討して送迎サービスの提供可否が決定されます。
安全性の観点から見ると、お子様が一人で通所する際の道路状況や交通環境は重要な判断基準です。
たとえば、歩道が整備されていない、横断歩道に信号機がない、幹線道路沿いで交通量が多い、交差点の見通しが悪いなどのケースは、お子様の安全確保のために送迎の必要性が高いと判断されます。
小学校低学年のお子様、知的障害により危険の判断が困難なお子様、視覚や聴覚に障害があり交通状況の把握が困難なお子様なども、送迎が必要と判断される場合が多いです。
一方で、適切な判断能力があり、安全に一人で移動できるお子様や中高校生は、自立促進の観点から一人での通所が推奨される場合もあります。
また、地域やお住まいの公共交通機関の状況や利便性も重要な判断要素です。
バスや電車の本数が少ない、最寄り駅や停留所からの距離が遠い、公共交通機関がバリアフリー対応していない地域の事業所では、送迎の必要性が高くなります。
送迎サービス提供の大事なポイントはお子様の「将来的な自立を見据えた配慮」であり、理想的なのは、最初は完全な送迎から始まり、お子様の成長に応じて徐々に自立に向けた支援に移行することです。
たとえば、以下のような段階的なアプローチが考えられます。
第1段階 | 完全送迎(ドア・ツー・ドア) | 安全な通所の確保やサービス利用の安定 |
第2段階 | 一部区間の自力移動(最寄り駅まで送迎) | 公共交通機関の利用経験 |
第3段階 | 見守り付き自力通所 | 自立への自信獲得 |
第4段階 | 完全自立通所 | 社会参加能力の向上 |
送迎の必要性は固定的ではないため、お子様の成長や環境の変化に応じて定期的に見直しましょう。
支援計画の更新時期に合わせて、送迎継続の適切性を保護者、事業所、相談支援専門員が協議し、お子様にとって最適な支援方法を検討することが重要です。
学校への送迎が認められる具体的な条件
学校から事業所への送迎は、すべての放課後等デイサービス利用者に自動的に提供されるものではありません。
4つの条件のいずれかを満たした場合にのみ実施されます。
1. スクールバスでの対応が困難な場合
最も一般的な条件として、スクールバスでの送迎が実施できない地理的な制約が挙げられます。
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事業所がスクールバスの運行ルートやエリアから大きく外れている
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道路事情により、スクールバスが事業所付近まで運行できない
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スクールバスの運行時間と事業所の利用開始時間が合わない
2. 他の生徒への影響を考慮した場合
物理的にはスクールバスでの送迎が可能であっても、放課後等デイサービスを利用しない他の生徒の乗車時間が大幅に延長される場合は、考慮の対象となります。
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事業所への経由により大幅な迂回が必要で、他の生徒の帰宅時間が30分以上延長される
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複数の事業所を経由すると、バスの運行時間が過度に延長され運行効率が著しく悪化する
3. 就学奨励費での対応ができない場合
特別支援学校等では、就学奨励費を活用して通学や施設間移動の交通費を支援する制度があります。
この制度を利用しても学校と事業所間の送迎手段を確保できない場合、事業所による送迎が認められます。
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就学奨励費の支給額では交通費が不足する
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公共交通機関がなくタクシー利用を要するが、就学奨励費では頻繁な利用が困難
4. 市町村が特に必要と認める場合
上記の3つの条件に該当しなくても、市町村が個別の事情を考慮して送迎が必要と認める場合があります。
これは最も柔軟性のある条件で、地域の実情や個別のニーズに応じた判断が可能です。
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スクールバスで途中まで送迎後、事業所による追加送迎が必要
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医療的ケアが必要なお子様または重複障害児で、安全確保や専門的な対応が可能な車両が必要
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家庭の特別な事情(保護者の重篤な疾患、家族の急な入院等)
これらの条件を満たしていても、障害児支援利用計画または放課後等デイサービス支援計画に学校送迎の必要性が明記されていなければ、送迎加算の対象とはなりません。
学校からの送迎実施には学校側との密接な連携が不可欠なため、以下の点の事前調整が必要となります。
送迎時刻 | お迎え時間の設定 | 授業終了時刻との調整 |
送迎場所 | 校内の乗車場所 | 安全性と利便性の確保 |
連絡体制 | 欠席や変更時の連絡方法 | 確実な情報共有システム |
緊急時対応 | 災害や事故時の対応方針 | 学校・事業所・保護者の役割分担 |
支援計画には「学校送迎が必要な具体的理由」「送迎の開始予定時期と期間」「保護者の就労状況や家庭環境」「お子様の障害特性と送迎の必要性の関連」を明確に記載しましょう。
送迎にかかる費用と時間の目安
送迎サービスの利用を検討する際、多くの保護者が気になるのが費用負担と所要時間です。
送迎加算の仕組みは複雑に感じられるかもしれませんが、基本的な考え方を理解すれば安心してサービスを利用できます。
ここでは、送迎にかかる具体的な費用と時間を詳しく解説します。
送迎加算の単位と自己負担額
送迎加算があると聞くと「利用料が高くなるのでは?」と不安に思う方もいるかもしれません。
しかし送迎加算を含む放課後等デイサービスの費用は、国や自治体の給付(障害児通所給付費)によって大部分が公費で負担され、保護者の自己負担は原則1割のみです。
事業所は、運転に関わる人件費や車両維持費をこうした公費を元に賄い、継続的に安定した送迎サービスを提供しています。
月ごとの自己負担上限額は世帯の所得区分に応じて定められており、複数の事業所を併用する場合も合算して適用される仕組みから、利用回数が増えても一定額以上にはなりません。
現在の月額負担上限
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生活保護受給世帯:0円
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市町村民税非課税世帯:0円
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市町村民税課税世帯(所得割28万円未満):4,600円
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市町村民税課税世帯(所得割28万円以上):37,200円
送迎加算による自己負担額を導く基本計算式は【送迎加算単位数 × 地域単価 × 自己負担割合 】で、単位数はお子様の障害程度や医療的ケアの必要性に応じて変動します。
一方、移動が限定的な同一敷地内や隣接する建物間のみの送迎では、通常単位数の70%が適用されます。
代表的なケースの目安を「地域単価10円/単位」「自己負担割合10%」とした場合で下表にまとめました。
片道 | 往復 | 1回あたり | 1日あたり |
|
一般の障害児(重症心身障害児を除く) | 54 | 108 | 54 | 108 |
重症心身障害児または医療的ケア児 | 40 | 80 | 40 | 80 |
中重度医療的ケア児(医療的ケア16点以上) | 80 | 160 | 80 | 160 |
以下の場合は送迎加算の対象とならない可能性があるため、注意が必要です。
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お子様が送迎車両への乗車を拒否し、サービス提供に至らなかった場合
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保護者の都合により、事前の合意なく送迎をキャンセルした場合
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事業所の都合により送迎ができなかった場合
送迎加算は、利用者の経済的負担を最小限に抑えながら、必要なサービスを安定して提供するよう設計されています。
単価設定は各地域の物価水準や人件費が考慮されているため、詳しくは、利用を検討している事業所や市町村の障害福祉課にお問い合わせください。
送迎時間の一般的な目安と変動要因
送迎の所要時間は、利用者の生活リズムや事業所のスケジュール管理に大きく影響するため、事前にしっかり把握しておくことが重要です。
多くの放課後等デイサービスでは、以下のような時間で送迎が行われています。
自宅⇔事業所間 | 15~30 | 直行の場合 |
学校⇔事業所間 | 20~40 | 他の利用者との相乗り含む |
複数箇所経由 | 30~60 | 3~4名の利用者を順次送迎 |
送迎時間の多くは、30分以内に設定されます。
主な理由に挙げられるのは、長時間の移動はお子様に負担がかかること、とくに感覚過敏のお子様にとってはストレスとなる可能性があること、事業所でのサービス提供時間が削られることです。
ただし送迎にかかる時間は日々一定ではなく、さまざまな要因によって変動します。
まず大きな影響を与えるのは、送迎場所と事業所までの距離です。
送迎範囲は半径5km程度が一般的ですが、地域の事情によって10km以上の範囲で対応している事業所もあります。
次に、送迎ルートによっても時間は変わります。
自宅から最短距離で直行する場合は早く到着しますが、複数のお子様のお迎えする「循環ルート」や学校から各家庭を回る「学校経由ルート」では、利用者数の増加に応じて所要時間も長くなります。
また、交通事情も大きな要因です。
送迎時間は、朝夕のラッシュによる渋滞、学校周辺の混雑、悪天候による道路状況の悪化、さらには工事や事故といった予想外のトラブルでも延びることがあります。
最後に、お子様ごとの個別事情の影響です。
車椅子の固定や医療機器の準備、降車時の荷物や保護者への引き継ぎ、不安になって落ち着かないお子様への声かけや対応に時間を要することもあります。
送迎時間には10〜15分程度の幅があることを理解し、変動に備えて緊急時の連絡体制を事前に確認しておきましょう。
送迎時間はサービス提供時間に含まれない
放課後等デイサービスの「送迎時間」と「サービス提供時間」の違いは、多くの保護者が混乱しやすいポイントですが、両者は明確に区別されており、費用算定の仕組みも異なります。
サービス提供時間とは、子どもが事業所に到着し、療育や活動などの支援が始まった時点から終了までを指すため、送迎にかかる時間は含まれません。
送迎時間 | 迎え~到着/出発~送り届けまでの時間 | 送迎加算として算定 |
サービス提供時間 | 事業所内でのサービス実施時間 | 基本報酬での算定 |
放課後等デイサービスの基本ルールでは、事業所に到着後30分以上サービスを受ける必要があり、事業所での活動時間が30分未満だと、原則として「送迎加算」も「基本報酬」も算定不可となります。
たとえば、15:00に出発し15:30に来所、16:30に事業所を出て17:00に帰宅の場合は、サービス提供時間が60分なので基本報酬と送迎加算を算定可能です。
一方、15:00に出発し15:30に来所、15:55に事業所を出て16:25帰宅の場合は、サービス提供時間が30分未満のため、原則どちらも算定できません。
ただし取り扱いは、サービス提供時間が30分未満になった理由が「利用者と事業所のどちらの都合に由来するか」によって異なるため、2つの具体例から確認していきましょう。
①利用者都合の通院による「短時間利用」の旨を事前に連絡し、15:00〜15:20だけサービスを受ける場合
利用計画の当初に想定していたサービス提供時間(たとえば1時間)をもとに、基本報酬が算定される可能性があります。
②送迎トラブルで予定より遅れ、結果的に15:40〜16:00の20分しか利用時間が取れなかった場合
トラブルの要因が事業所都合と判断されると、基本報酬と送迎加算のどちらも算定できません。
事業所では適切なサービス提供時間を確保するため、余裕のある送迎スケジュールの運用や交通渋滞等を見越した出発時刻の調整を行っています。
保護者の方も、医療機関の受診等で30分未満の利用が予想される場合は、事前に事業所と相談することが大切です。
送迎サービスでよくある疑問とトラブル解決策
放課後等デイサービスの送迎現場では、計画通りにいかない場面も少なくありません。
まずは、送迎制度や運営に関して保護者から寄せられる疑問を見ていきましょう。
Q1.医療的ケア児の送迎に看護師は同乗してくれるの?
A.喀痰吸引や経管栄養などの医療行為が必要な場合は、厚労省の制度に基づき、看護職員または研修修了者が同乗・同行する体制を取ります。
Q2.児童発達支援管理責任者(児発管)が送迎業務を行うことはある?
A.法令では一律禁止されていないため、可能性としてはあり得ます。
ただし、緊急時の対応や連絡体制も確保した上で、本務(計画策定やモニタリング)に支障が出ない体制であることが前提です。
Q3.送迎加算はいつ算定できる?
A.自宅・学校・合意場所からの送迎を実施した場合に算定可能になります。
Q4.同乗スタッフは必ず必要?
A.法令で明確な人数規定はありませんが、安全上は「運転手+添乗1名」の2名体制が望ましいです。
医療的ケア児や行動上配慮が必要な場合は増員が適切とされます。
Q5.送迎だけで終わり、サービス提供に至らなかった場合は?
A.実際にサービスを提供していない場合は、送迎加算は算定できません。
次にお子様の体調や気持ちの変化、交通状況、緊急事態など、送迎において想定されるトラブルの対処法をまとめました。
放課後等デイサービスにおけるトラブルは、多岐にわたる理由や背景を理解することが解決の第一歩となります。
お子様側の行動・体調 | ・安全な場所に停車 |
シートベルトやチャイルドシートの拒否 | ・「安全に走れない」と短く説明し、装着するまで出発しない |
迎え先に保護者が不在 | ・引渡し者リストで確認 |
交通渋滞や悪天候による遅延 | ・到着予想時刻を共有し、安全最優先で運行 |
降車時の置き去り防止 | ・降車時に点呼と座席確認を徹底 |
当日キャンセル・遅延 | ・キャンセルポリシーの周知 |
事故・車両故障 | ・けがの有無確認→119/110→保護者・事業所・自治体へ連絡→記録 |
到着時の降車拒否・寝落ち | ・声かけ→数分待機→二名体制で安全誘導 ・到着5分前から音量・照明で覚醒を促す |
お子様が送迎車に乗るのを拒否する場合
お子様が乗車を拒否し、結果的にサービス提供に至らなかった場合は、送迎加算の対象にならない点を理解しておかなければなりません。
事業所側の適切な対応により乗車できた場合は通常通り算定されるため、時間をかけてでもお子様の気持ちに寄り添うことが大切です。
乗車拒否を事前に防ぐために、まずは以下の予防対策を徹底しましょう。
【信頼関係の構築】
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日頃から送迎スタッフとお子様との良好な関係を築く
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お子様の好みや特性を詳細に記録し把握する
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定期的にお子様の状況を保護者と情報交換する
【環境の安定化】
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可能な限り同じスタッフが送迎を担当する
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車両や座席配置を一定に保つ
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送迎時間や経路の安定化を図る
【体制の整備】
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お子様の体調や気分に応じたスケジュール調整の柔軟性を確保
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緊急時の代替手段(保護者による迎えなど)の事前確認
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複数の対応方法を状況に応じて選択できるよう準備
適切な対応方法を理解しておくと、お子様の気持ちに寄り添いながら安全な送迎を実現できます。
体調不良・疲労 | ・学校で疲れた | 体調を最優先に考慮して無理をさせない |
感覚過敏 | ・車のにおいや音、振動が苦手 | 環境調整や慣れ親しんだ物を持参させる |
不安・恐怖 | ・新しいスタッフ | 説明に十分な時間をかけて安心感を提供 |
気持ちの切り替え困難 | ・学校から事業所への移行が辛い | ゆっくりとした移行支援と声かけ |
こだわりの強さ | ・いつもと違うルートや座席 | 可能な限りいつものパターンを維持 |
最も重要なのは、お子様の話をじっくり聞き、車に乗りたくない理由や不安・心配に共感することです。
「どうして車に乗りたくないのかな?」「何か心配なことがあるの?」と優しく問いかけることから始めましょう。
お子様が理由を説明できない場合でも、「今日は疲れちゃったのかな」「ちょっと不安な気持ちになったのね」など、お子様の気持ちを代弁すると安心感を与えられます。
次に重要なのは、お子様の特性や好みに合わせた対応や座席調整を検討することです。
送迎時間を楽しく過ごせるよう、好きな音楽や動画を車内で見聞きさせ、普段から愛用しているぬいぐるみやタオル、おもちゃなどを持参させるといった工夫を施すと、お子様が安心できる環境を作れます。
また、急に車に乗せようとするのではなく、段階的に慣れてもらうアプローチを取ることも効果的です。
第1段階 | 車の近くで一緒に過ごす | 車への恐怖心を和らげる |
第2段階 | ドアを開けて車内を見学 | 車内環境への興味を促進 |
第3段階 | 短時間の着席体験 | 実際の乗車への準備 |
第4段階 | エンジンをかけずに座席で過ごす | 車内での安心感を構築 |
第5段階 | 短距離での実際の乗車体験 | 成功体験の積み重ね |
スタッフ一人での対応が困難な場合は、他のスタッフに協力を求め役割分担を明確にすると、より質の高い支援が可能になります。
お子様の特性や好み、効果的な声かけ方法をスタッフ間で共有し、乗車拒否が続いた場合の代替案も事前に準備しておくと、お子様への最適な対応を選択できます。
乗車拒否が発生した場合には、保護者との密な連携が欠かせません。
お子様の状況と気持ち、対応方法と結果、今後の予定と保護者への相談事項などを、迅速かつ正確に情報共有し、継続的な改善に向けた協議を行いましょう。
より良い送迎方法の検討に向けて必要になる情報は、お子様の好きなものや安心できる環境、家庭での様子や最近の変化です。
乗車拒否への対応はただの問題解決ではなく、お子様の気持ちに寄り添い、安心して通所できる環境を整えるための重要な支援活動といえます。
お子様が送迎サービスを安心して利用できるよう、適切な対応により継続的な改善に取り組むことが大切です。
まとめ:送迎サービスを活用して、より安心して放課後等デイサービスを利用しよう
放課後等デイサービスの送迎は、保護者の負担を軽減し、お子様の安全かつ安定した通所を支える重要な仕組みですが、送迎場所や利用条件、費用や時間の目安は事業所ごとに異なります。
乗車拒否や体調不良、遅延などのトラブル対応は日常的に発生するものの、事前の準備と情報共有によって解決できるケースが多いです。
利用を検討する際は、送迎範囲や時間の目安、運休・短縮の基準、送迎加算の算定方法や自己負担の有無、医療的ケア児の支援体制やトラブル時の対応マニュアル、保護者への連絡体制などの確認が大切です。
送迎のサービス自体の有無ではなく、こうしたポイントを比較検討すると、継続利用の安心度合を見極められます。
送迎サービスはただの移動手段ではなく、家庭全体の生活の質を高める支援でもあります。
保護者と事業所が協力しながら活用していくと、お子様にとってより良い環境をつくり出せるでしょう。
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