放課後等デイサービスの開業を考えている方の中には、「経営者の年収はどのくらいなのか?」「収益を伸ばすにはどうすればいいのか?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、放課後等デイサービスの市場や収益の仕組み、経営者の平均的な年収、さらには収益アップのポイントについて詳しく解説します。
1. 放課後等デイサービスの経営者の年収は約『350万~500万円』
放課後等デイサービスの経営者の年収は、おおよそ350万~500万円と推定されます。
経営者の年収を考える際のポイントは、以下の通りです。
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多くの経営者は「管理者」として業務を兼務する
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管理者の平均年収は「約378万円」
(厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果」より)
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経営者はこの金額に役員報酬が加算されるため、350万~500万円の範囲に収まるケースが多い
年収がさらに高くなるケース
経営者の年収は、事業の運営状況や規模によって変動します。
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事業が順調に成長すれば、年収はさらに増加する可能性あり
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複数の事業所を運営すれば、収益も増え年収はさらに高くなる傾向
一方で、開業時の目安としては、350万~500万円程度を想定しておくのが現実的でしょう。
2. 放課後等デイサービスの経営は儲かるのか?
「放課後等デイサービスの経営は利益を出しやすいのか?」と気になる方も多いでしょう。
ここでは、事業の仕組みや収益構造、市場の動向について詳しく解説します。
(1)放課後等デイサービスの事業概要
放課後等デイサービスとは、障害のある児童が放課後や長期休暇中に療育(発達支援)を受けられる事業です。
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対象:
就学している6歳〜18歳の児童(障害や発達特性がある子ども)
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目的:
日常生活に必要なスキル習得や集団生活への適応を支援
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特徴:
子ども一人ひとりに合わせた個別支援プログラムを提供
(2)放課後等デイサービスの収益構造
放課後等デイサービスの主な収益源は、障害福祉サービス報酬です。
🔹 報酬の決定要素
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厚生労働省が定める単価
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利用定員・提供時間・サービス内容・人員配置 などによる変動
🔹 報酬の請求と支払いの流れ
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利用者負担:
報酬の約1割を保護者が負担
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国保連への請求:
残りの約9割を
国民健康保険団体連合会(国保連)
へ請求
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入金タイミング:
サービス提供月の約2か月後に国保連から入金
(3)放課後等デイサービスの市場動向
① 利用者数の推移
放課後等デイサービスの利用者数は年々増加しています。
📈 2012年からの10年間で『約10.45倍』に増加(参考:厚生労働省「社会福祉施設等調査」)
② 事業所数の推移
事業所数も利用者数の増加とともに増えています。
📈 2012年からの10年間で『約5.5倍』に増加(参考:厚生労働省「社会福祉施設等調査」)
(4)放課後等デイサービスの利益率の推移
放課後等デイサービスの平均収支差率(利益率)は以下の通りです。
調査年 | 放課後等デイサービス | 障害福祉サービス全体 |
令和5年調査 | 5.80% | 5.30% |
令和2年調査 | 10.70% | 5.00% |
平成29年調査 | 10.90% | 5.90% |
平成26年調査 | 14.50% | 9.60% |
(参考:厚生労働省「障害福祉サービス等経営実態調査結果」)
(5)放課後等デイサービスは「儲かる事業」と言えるのか?
近年、収支差率は低下傾向にあるものの、障害福祉サービス全体と比較すると依然として高い水準を維持しています。
そのため、適切な運営ができれば「儲かる可能性が高い事業」と言えるでしょう。
3. 放課後等デイサービスはどうすれば開業できる?
放課後等デイサービスを開業するには、いくつかの重要な手順を踏む必要があります。
ここでは、開業までの流れをわかりやすく解説します。
(1)放課後等デイサービス開業の流れ
開業までの主なステップは以下の通りです。
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法人設立(株式会社・合同会社・NPO法人などを設立)
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事業計画書の作成(運営方針や資金計画を策定)
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資金調達(自己資金・融資・助成金の活用)
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物件探し(立地や広さ、設備要件を考慮)
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従業員の採用(管理者・児童発達支援管理責任者・指導員など)
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物件のリフォーム(バリアフリー化や設備の整備)
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備品の調達(机・椅子・教材・送迎車など)
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指定申請(行政に許認可を申請)
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開業(利用者募集・事業開始)
(2)開業にはどれくらいの期間が必要?
放課後等デイサービスを開業するまでには、一般的に半年~1年程度の準備期間が必要です。
この期間に行う主な作業は以下の通りです。
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法人設立や指定申請などの行政手続き
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物件・備品の手配
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従業員の採用と教育
開業には多くの準備が必要ですが、事前にしっかり計画を立てることで、スムーズな運営につながります。
4. 放課後等デイサービスの経営で年収を上げる方法
放課後等デイサービスを経営し、年収をアップさせるためのポイントは大きく2つあります。
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1️⃣
経営する事業所数を増やす
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2️⃣
1事業所あたりの利益を増やす
それぞれの具体的な方法を見ていきましょう。
1️⃣ 経営する事業所数を増やす
複数の事業所を運営することで、利益の総額を増やし、経営者の年収を上げることが可能です。
✅ 事業所を増やすメリット
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収益の拡大:
同じ利益率の事業所が増えれば、総利益が増える
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経営の安定化:
事業所間で職員の調整・連携が可能
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利用希望者の紹介がしやすい:
満員の事業所から別の事業所へ案内できる
⚠ 事業所を増やす際のリスク
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資金調達の負担増:
新規開業のための借入が必要になる可能性
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職員や利用児童の確保が難しくなる:
適切な人材・利用者が確保できないと運営が厳しくなる
2️⃣ 1事業所あたりの利益を増やす
1つの事業所でより高い収益を確保することで、経営者の年収を上げることができます。
具体的な方法として、次の3つが挙げられます。
① 稼働率を上げる
利用者数を増やし、施設の稼働率を向上させることで収益アップが可能です。
✅ 稼働率を上げる施策
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集客を強化する
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関係機関(病院・学校・相談支援事業所など)への営業
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地域でのチラシ配布
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ホームページの作成・SNS配信
② 加算を適用する
加算を活用することで、基本報酬に上乗せして収益を増やすことが可能です。
✅ 加算の見直しポイント
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今後算定できる加算があるか確認
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すでに算定要件を満たしている加算がないかチェック
加算の活用は、他事業所との差別化やサービスの充実にもつながるため、積極的に検討しましょう。
③ コストダウンの取り組み
支出を削減し、利益率を向上させることも重要です。
✅ コスト削減の具体策
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光熱費の節約(節電・節水)
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ペーパーレス化(用紙代・印刷費の削減)
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業務効率化(残業削減による人件費削減)
まとめ
放課後等デイサービスで年収をアップするには、事業所を増やすか、1事業所あたりの利益を増やすことが鍵となります。
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🔹
事業所数を増やす:
経営の安定化にもつながるが、資金調達や人材確保に注意
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🔹
1事業所あたりの利益を増やす:
稼働率向上・加算の活用・コスト削減の3本柱が重要
戦略的な経営を行うことで、より安定した収益を確保し、年収を向上させることが可能になります。
5. まとめ
ここまで、放課後等デイサービスの市場動向、経営者の年収、そして年収を上げるための方法について解説してきました。
放課後等デイサービスの運営は、児童への療育支援に加え、日々の記録・書類作成、請求業務、人材採用など幅広い業務が求められる事業です。
経営を成功させるためには、市場の動向を把握しながら、適切な運営戦略を立てることが重要です。
✔ 収益を向上させるためのポイント
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事業所数を増やして規模を拡大する
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1事業所あたりの利益率を高める(稼働率向上・加算の活用・コスト削減)
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業務の効率化を進め、安定した運営基盤を整える
これらのポイントを押さえることで、安定した収益を確保しながら、長期的に成長できる経営を目指しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。